#14:五色の短冊【朝丘 大介】

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五色の短冊   朝丘 大介

 

僕の実家の近所には、師岡熊野神社という神社がある。

 

 

七月になると、毎年きれいに展示された七夕竹に、地元の子どもが書いた短冊(たんざく)が結いつけられている。

 



幼稚園児から小学六年生まで。女の子のほうが心もち字がきれいなので、男女の見わけはつく。

 



まだ字を教わっていない園児は、色鉛筆で花やお日さまなんかの絵を描いているか、

 

先生にきれいな字で願いごとを代筆してもらっているようだ。

 


願いごとはバラエティーに富んでいる。

スタンダードは、だいたいこんな感じだ。



「 あたまがよくなりますように 」
「 じてんしゃがひとりでのれますように 」
「 せが たかくなりますように 」
「 牛にゅうをすきになれますように 」


……まあ、ここらへんは、いつの時代もさほど変わらない気がする。


おもいのほか多かったのが、

「 さかあがりができますように 」

……体育の時間、クラスメイトの前でやるから、できないとつらいのかも。



男の子で多かったのが、

 

「 さっかせんしゅになりたいです 」

「 くるまつくるしと 」


一方、女の子のほうはというと、



「 おひめさまになりたい 」
「 ようちえんのせんせいになりたい 」
「 トリマーになれますように 」
「 あいすやさんになりたい 」



そのほか女の子には、ケーキや、かんごし、ぴあのの先生、
花やさんなどが人気があるようだが、職業系では、

「 パティシエールになれますように 」

というのがけっこう目につく。

……パティシエールなんて、よく知ってるなぁ。ドラマかなにかでブームなのかな。


そして、やはりあった女の子の短冊。


「 しょうらい○○○くんとけっこんできますように



……でも、情熱的な娘って、心変わりしちゃったりするんだよな。

 


トレンディーな短冊。


「 アニメのせいゆうになりたい 」
「 お天気キャスターになれますように 」
「 子役オーディションで受かりますように 」


……うーん。時代ですね。ぼくが子どものころには見られなかった
  願いごとです。 漫画家になりたいとかなら いた気がするけど。

お次は贅沢( ぜいたく )な願いごと。

 

「 3Dテレビをかってもらえますように 」

 

……3Dテレビ。そんなのあるのか。知らんかった。

 

「 一週間100万円たまりますように 」

 

……子どもならではのスケールのでかさ。でも、一週間で100万円
  貯めるには、桁外れな おこづかいをもらわないと。


次は 子どもらしい短冊。

「 おやつがたくさんもらえますように 」
「 おかしいっぱい 」
「 ととろにあいたい 」

……こういう子どもらしい願いごとがあると、なぜだか安心するなあ。


最後に意味不明だった短冊。

「 ドラゴンボールになりたいです 」


……子どものころ、こういう訳のわからないことをいう子っていた。


「 わすれないように、おうえんしてください 」

……はい。 陰ながら応援しています。


いつの時代も 夢を語れるのは 少年少女の特権だが、いま短冊を書くべきなのは、

子どもよりもむしろ 夢を失くしている大人のほうなのかもしれない。

 

今年も七月に師岡熊野神社に飾られる五色の短冊を見るのが楽しみだ。

 

朝丘先生
朝丘先生
来年この記事の続編が書けるように、今年は短冊をよく見てきます。

©2023 Daisuke Asaoka

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