#41:出版放浪記⑤ ゲラのやりとり【朝丘 大介】

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出版放浪記⑤ ゲラのやりとり

 

2008年の春、出版契約を済ませたあと、担当編集者さんと『オレンジ病棟』のゲラのやりとりが始まった。

 

 

ゲラというのは、完成した本を想定して、試し刷りした原稿のことだ。

 

 

入院生活でカセットレコーダーが役に立った話は前に書いたが、本の制作過程で担当編集者さんと打ち合わせするさいにも助けとなった。

 

 

打ち合わせは二か月に一度。一回の打ち合わせ時間がおよそ二時間。

 

 

担当編集者さんの了承をとり、毎回カセットレコーダーをまわさせてもらった。

 

 

一応IQは保たれているので、その場で理解できても、話したことや聞いたことが垂れ流しで、終わってしまうと忘れてしまうことがほとんどで、三十分も経つと集中力がなくなってしまう。

 

 

自分に足りないところを補完するため、どうしても録音が必要だった。

 

 

担当編集者さんは頭の回転が速い方だったので、正直会話のペースが速すぎてついていけないこともあった。

 

 

とりあえずチンプンカンプンでも、その場では「はい。わかりました」とだけ頷いていた。

 

 

ついてゆけなかった部分は、あとからテープで補うのである。

 

 

ボリュームが多すぎて削るべきところ。もっと書きこむべきところ。キャラクターについて。漢字にする言葉とひらがなにする言葉の使い分け。そのほかいろいろな検討事項について、毎回宿題をいただいて帰った。

 

 

家に帰ると、録音したテープを何度も聴きかえしながら、注意された点を再確認して書きなおす作業を積みかさねていった。

 

 

僕の頭は学習したことが蓄積されづらいので、それから何年も、犬の散歩中に編集者さんとの打ちあわせテープを聴きかえしながら、小説について物おもいに耽った。

 

 

初めて出版社に電話をしたとき、たまたま電話をとったのが、僕の担当編集者さんだった。

 

 

編集者には仕事ができる人とできない人がいて、僕は両方を経験したことがあるのだが、このとき担当になった人は〈当たり〉で、この方が担当になったことは、その後の僕の人生観を大きく変えることになった。

 

 

この編集者さんはとても利口者で、おおらかで、たくさんの人と深く言葉を交わしてきた感じだった。

 

 

お互いに早とちりする性質(たち)で、しばしばメールのやりとりで齟齬が生じた。そうした思い違えは打ち合わせのときに直接話をすることで解消されるのだった。

 

 

本づくりは、担当編集者さんがつくった進行表に沿って進めていった。

 

 

こちらが何週間か書いて、ゲラ(原稿)を郵送し、数週間後、また出版社で編集者さんとどのように書いていったらよいのか協議するというサイクルだった。

 

 

返ってきたゲラには、編集者さんの直しが。文章のあちこちが赤ペンで囲まれ、〈トル〉と書かれていた。

 

 

キャラクターが出すぎて主旋律が聞こえなくなる部分や、ここはなくても十分面白いといった部分に赤ペンが入る。

 

 

この〈トル〉によって、余計な脂肪分は削ぎとられ、文章が洗練されていった。

 

 

書いていて迷っているところは、二通りのパターンを用意していった。

 

 

こちらの文章でいくか、それともこういう文章のほうがいいか、担当編集者さんと話しながら考えていくのである。

 

 

一緒に時間をかけて話しあい、アイデアを練りこんでいった。

 

 

持ちこみをした当初、『オレンジ病棟』はタイアップだらけの小説だった。

 

 

たとえば、旭川には山頭火というラーメン屋さんがある。

 

 

「山頭火のラーメン、美味しかったよ」

 

 

主人公にそう言わせれば、読んだ人が関係者に知らせ、店の人が宣伝用に買ってくれる。

 

 

――これで本が三冊は売れる。ぷぷっ(笑)

 

 

担当編集者さんから「そういうことはやめましょう」と却下された。

 

 

またディズニーのキャラクターも何回か登場させていたが、ディズニーは版権にうるさいとのことで、たとえば〈ドナルドダックのような口をして〉は〈アヒルのような口をして〉と訂正された。

 

 

編集者さんは「今この瞬間」の言葉に目ざとかった。

 

 

会話の中で僕が使っている言葉は、ほとんどが八十年代の言葉であると指摘され、訂正された。

 

 

「この言葉の漢字は差別用語にあたるので、ひらがなにしましょう」

 

 

漢字でいく言葉、ひらがなでいく言葉は、すべて「用語統一表」にまとめ、育毛に関する参考文献とともに提出した。

 

 

思ってもみなかったアイデアのアドバイスに思わずハッとさせられることが幾度となくあった。

 

 

担当編集者さんの導きによって、作品の完成度はすこしずつ高まっていった。

 

 

もちろん、うまくいかなかったこともある。

 

 

たとえば主人公の「クルミ」という記述を「僕」でリライトしてくださいという指示が、担当編集者さんからきた。

 

 

三人称を一人称で書きなおすわけだ。

 

 

『オレンジ病棟』は〈自分を受け容れること〉をテーマにした作品だが、当時の僕はまだ高次脳機能障害の症状がいまよりもあり、精神的にいっぱいいっぱいで自分の置かれた状況を受け容れられる状態ではなかった。 

 

 

それなのに、作品の中の「僕」だけが自分を受け容れるなどと書くことはどうしてもできない。

 

 

これが三人称の「クルミ」だったら、物語のキャラクターと割りきり、爽やかに受け容れさせていたかもしれない。

 

 

「クルミはクルミ。朝丘さんは朝丘さん」

 

 

担当編集者さんからそう言われても、クルミと自分がごっちゃになってしまい、結局使い分けられないまま校了した。

 

 

まあ、だからといって失敗だったとは思っていない。

 

 

交通事故から四年目のそのときは、どうあがいても、それが僕のキャパシティーの限界で、それがリアリティーだったのだ。

 

 

いきなり理不尽に断ちきられた人生を、そんなに簡単に受け容れられるストーリーのほうが、かえって胡散臭い。

 

 

いまなら自分を受け容れられるし、その理由も説明できる。気分にムラはあるけれど。

 

 

話をもどすが、担当編集者さんのやることは、たくさんあった。

 

 

持ちこみをした人の原稿の下読み。原稿の講評。原稿の打ちあわせ。校正さん、イラストレーターさん、装丁さんとの打ちあわせ。

 

 

作品で使用されているCM曲の正式な歌詞や、レントゲンをかざして見るときの電光掲示板を〈シャーカッセン〉と呼ぶといったことも調べる。

 

 

どんなカバーでいくかということも、まずは担当編集者さんがアイデアをだす。目次のタイトルも考えてくださった。(僕が考えたタイトルもあるが)

 

 

ネット書店に掲載される本の紹介文章や、本の帯も、担当編集者さんが書いてくださった。帯は出版社の社長のチェックを受け、OKがでるまで書きなおしさせられるとのことだった。

 

 

いろいろと個人的なことにも、相談にのっていただいた。

 

 

編集者が著者のバックボーンを把握していると、それが思わぬところで作品にフィードバックされることがあるからだ。

 

 

ひとりの著者に対し、ざっとこれだけのことをしなければならないのだが、僕の担当は、ほかにも何人かの著者を抱えていた。

 

 

担当編集者との〈魂のキャッチボール〉を通して、作品の内容を深めていった。

 

 

©2024 Daisuke Asaoka

 

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