#25:シンゴとタモツ① マイペース【朝丘 大介】

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#25:シンゴとタモツ マイペース【朝丘 大介】

転校生のシンゴが屋上でカレーパンをぱくついていると、オタクっぽい
少年が近寄ってきた。

 

 

「やあ」

 

 

「えっと……。きみは……」

 

 

「タモツだよ」

 

 

「そうだ! タモツくんだ!」

 

 

横手を打つシンゴに、タモツくんは低くこもった声で言った。

 

 

「からかってくるやつがいたら、いつでも言えよ。おれがそいつを

 

ぶっ倒してやっから」

 

 

「ほんと?」

 

 

「ああ」

 

 

「じゃあ、柔道部の大山!」

 

 

シンゴは自分にちょっかいをだしてくる、学年一の巨漢の名をあげた。

 

 

「うーん、大山かあ……。あいつはまだまだ伸びるよ」

 

 

タモツは、ゆっくりとクリームパンを口に運んだ。

 

 

「ぶっ倒してくれるの?」

 

 

「まあ、待ちなよ。いま、運動学的に考えているんだからさ。うーん……」

 

 

のんびりと雲を眺めながら考えにふけっているタモツを見て、
シンゴは、だめだこりゃ、と思った。

 

©2023 Daisuke Asaoka

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