新生面を拓いた功績 朝丘 大介
映画好きの知人と話したときのこと。クエンティン・タランティーノ監督の話題になった。
僕は同監督がなぜこれほど世界的に絶賛されているのかわからないといったことを彼に話した。
その知人もタランティーノ監督をそれほど買っているわけではなかったが、
この監督は「ひとつの手法を復活させた」という点において、おおいに評価できるというのだ。
タランティーノ監督が出現して以降、時間を巻きもどしたり、同じ出来事を
それぞれのキャラクターの目線で多角的に描く手法が、映画や小説で多用されるようになったという。
そうした手法は大昔にもあるにはあったが、
誰も用いなくなった現代に復活させたのがタラちゃんらしいのだ。
なるほど。そうした目で見ると、タランティーノ監督ってたしかに偉大かもしれない。
僕の場合、新たな流れを生んだ映画監督として心に浮かぶのが、ジョージ・ルーカス監督だ。
『スターウォーズ』の新三部作の制作が決まったとき、
だれもが前三部作の続きを撮るものだと思ったことだろう。
だが、出来上がった作品は『エピソードⅠ』
前三部作で悪役だったダース・ヴェイダーの若き日の物語だったのである。
ルーカス監督がこの作品を世に出して以降、時代をさかのぼらせ、
キャラクターの誕生秘話を描くスタイルが、映画やドラマ、漫画、小説などで大流行している。
とくに映画やドラマでは、役者が年を食ってしまっても、そのキャラの弱年時代として
ほかの役者をたてれば、オーディエンスは納得がいく。
また、この手法を用いることにより、世界観の奥行きがより深まり、
スケールアップ作品も少なくはない。
そういった意味で、ルーカス監督が新生面を拓いた功績は、とても大きなものに思えるのだ。

©2023 Daisuke Asaoka