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おやすみなさい 朝丘大介
夫と喧嘩した娘が、赤ん坊と大荷物をかかえて、突然うちに引っ越してきた。
「今日からここに住むからね」
「そんな話は、ひとことも聞いてないよ」
ぶうたれる妻に、娘は言った。
「だって、このあいだ、別れぎわに【おやすみなさい】って言っていたじゃん」
「ええ。それはたしかに言ったかもしれない。けど、それがどうしてあんたがウチに住むことに結びつくわけ?」
「だって、【おやすみなさい】って〈親〉が〈住みなさい〉って言っているわけでしょ」
強引なこじつけに、私と妻が愕然としていると、娘が得々とほざいた。
「親が住めって言っているんだから、私はここに住んで当然っていうことになるよね」
「ならない、ならない」
私と妻は激しく首を左右に振った。

朝丘先生
きっとこの娘と親は、似たもの同士なのでしょう。
©2023 Daisuke Asaoka