#7:おやすみなさい 【朝丘 大介】

スポンサーリンク

おやすみなさい   朝丘大介

夫と喧嘩した娘が、赤ん坊と大荷物をかかえて、突然うちに引っ越してきた。

 

 

 

「今日からここに住むからね」

 

 

 

「そんな話は、ひとことも聞いてないよ」

 

 

 

ぶうたれる妻に、娘は言った。

 

 

「だって、このあいだ、別れぎわに【おやすみなさい】って言っていたじゃん」

 

 

「ええ。それはたしかに言ったかもしれない。けど、それがどうしてあんたがウチに住むことに結びつくわけ?」

 

 

「だって、【おやすみなさい】って〈親〉が〈住みなさい〉って言っているわけでしょ」

 

 

強引なこじつけに、私と妻が愕然としていると、娘が得々とほざいた。

 

 

 

「親が住めって言っているんだから、私はここに住んで当然っていうことになるよね」

 

 

「ならない、ならない」

 

 

 

私と妻は激しく首を左右に振った。

 

 

 

朝丘先生
朝丘先生
きっとこの娘と親は、似たもの同士なのでしょう。

©2023 Daisuke Asaoka

PR
最新情報をチェックしよう!