#54:珍しい名前【朝丘 大介】

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珍しい名前

 

昔、大槻ケンヂさんがラジオかなにかでこんなことを口にされたことがある。

 

 

 

「いやあ、ボン・ジョビってすごいよね~。だって、名前が〝ボン〟で名字が〝ジョビ〟なんだよ」

 

 

 

あまりの着眼点の良さに思わず唸ったおぼえがある。

 

 

 

兄が小学生のころ、同学年に和田明子という子がいて、学年集会などで名前を呼ばれると笑われていたという。

 

 

 

その話を聞いて、人と違った名前って残酷だなぁ、と子ども心に思った。

 

 

 

高校のころ、同学年にひとり、すごく珍しい名前の生徒がいた。

 

 

 

こういうご時世なので、どんな名前だったか書くのは控えさせてもらうが、英語を漢字のあて字にした名だった。

 

 

 

変わっているなあと思うのが韓国の名前。

 

 

 

アイ・ジンとかウンジョとか。

 

 

 

これは単に日本人にとって馴染みのないというだけの珍しさである。

 

 

 

〈エメリヤー・エンコ・ヒョードル〉といった名前も一度我われの世界に溶けこんでしまえば、それがふつうとなる。

 

 

 

中学のとき、帰国子女の級友がアメリカのテレビで『宇宙戦艦ヤマト』を見たら、主人公古代進の名前が〈スター・ジョー〉というになっていたという。

 

 

 

どこをどうすれば、〈古代進〉という堅実な名前が〈スター・ジョー〉などというド派手なキラキラネームになるのか。

 

 

 

フィクションの名前もアリなら、やはり『ドラえもん』の〈スネ夫〉を上回るネーミングはないだろう。

 

 

 

親から〈スネ夫〉なんて名づけられたら、子どもはたぶんグレるだろうな。

 

 

 

いまならば、役所に届ければ、名前の変更が認められるかもしれないけれど。

 

 

 

案外、〈スター・ジョー〉というペンネームで作家になったりして。

 

 

 

友だちが中学生のとき、僕につけたあだ名が「パル夫」。

 

 

 

むかし「PARCO」というファッションビルのCMがやたら流れていたころだったので、「PARCO」から「パル子」。さらに「パルオ」と変化して命名したのだろう。

 

 

 

ところで、ガソリンスタンドのバイトをしていたころ、みなから「奥さん」と呼ばれている女性がいた。

 

 

 

会社の偉い人のお嫁さんなのかと思っていたら、「奥」という名字だった。

 

 

 

ちなみに僕は本名(ラジオで小堺一機さんからは、いい名前と言われた)が十九画の凶なので、二十四画の大吉であるという安易な理由から〈朝丘大介〉というペンネームにしたのだが、たまに〈朝丘夕介〉に改名したい衝動に駆られることがある。

 

 

 

個人的には、名前は人を識別する記号であり、名前の真価を決めるのは、やはりその人本人の人間性だと思っている。

 

 

 

ところで、僕は小説で登場人物の名前をつけるときは、書店に行き、店内の書棚にささっている本の著者名を見ながら参考にすることが多い。

 

 

 

検索できない名前だと本が売れないので、著者名に読めない名前を使う著者は稀である。

 

 

 

余談だが、旭川に住む知人の住んでいる建物の名は、〈めぞん一刻〉である。

 

 

 

はじめは冗談かと思っていたのだが、本当だった。

 

 

 

実際に漫画や映画などから名前をつけることなんてあるのだろうか。

 

 

 

頭を捻ってみたが、ちょっと思い浮かばない。

 

 

 

キャラクターの名を子どもにつける親なら、メディアを通して見たことがある。

 

 

 

ペットになら、もっといそうだ。

 

 

 

映画『バック・トゥー・ザ・フューチャー』に登場する博士の犬の名は〈アインシュタイン〉だった。

 

 

 

博士にとってのアイドルが、アインシュタインだったということだろう。

 

 

 

ちなみに、僕が以前うちで飼っていたコッカ―スパニエルの名も、映画『マッドマックス』から命名している。

 

 

 

子犬がはじめてうちに来た日に、たまたまテレビで『マッドマックス』が放映されていたのだ。

 

 

 

小学三年生くらいのころだった。

 

 

 

父が僕に尋ねた。

 

 

 

「ところで犬の名前は何にする?」

 

 

 

『マッドマックス』を観ながら僕は答えた。

 

 

 

「……うーん。マックスにしようよ」

 

 

 

「よし。それじゃあ、マックスにするか」

 

 

 

「あははは! マックスゥ~! マックスゥ~!」

 

 

 

いま想うと、あまりにも右から左のネーミングだったと反省している。

 

 

 

©2024 Daisuke Asaoka

 

 

 

 

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