なぜ昔の人は大人に見えたのか
小さかったころ、〈大学生〉というと、子ども心に、すごい大人に思えたが、自分がその歳になって周りをみると、そうでもなかった。
かつて磯野波平と福山雅治さんが同じ５４歳というのが話題になったが、波平さんの54歳は老けすぎだが、昔の中年だったら54歳でそういう風貌の人もいた。
昔の中年のほうが〈分別盛り〉というように大人の顔をしていた。
たとえば、俳優を例にとっても昭和時代の俳優は、いまの俳優よりも大人に見えないだろうか。
顔がいまよりも顔が濃かったせいか。七三分けの髪型が暑苦しかったせいか。
いまは昭和に比べると、健康が科学的になってきて筋トレやフィットネスが発達していて、だれもが気軽に運動しているからか。
だが、昭和の時代、肉体を鍛えていたプロレスラーはどうだろう。
アントニオ猪木などは、20代のころから〈大人の顔〉をしていた。
新団体を立ち上げ、会社を引っ張ったり、モハメド・アリとの異種格闘技戦を実現させるため、数十億の借金を背負ったり、責任を背負っていたせいか。
同じように団体を背負ってきた坂口征二や前田日明も、大人の顔をしていた。
〈責任感〉が顔に表れるのではないか、なんて思う。
いまの20代のレスラーの顔は青年の顔をしている。
金髪の長髪や若々しい派手なファッションが関係しているのだろうか。
では、子どもの場合はどうだろうか。昔と比べていまの子どもの顔つきは変わっているだろうか。
たとえば３年B組金八先生の子役は、昭和の３年B組の生徒たちの悩みは、大人の抑圧下での家族、友だち、恋、受験勉強、いじめなどであった。
然らば、平成の３年B組生徒はどうだったか。
学校内での覚せい剤、性同一性障害、ネットでの仲間外れなど学校に新しい問題がでてきたが、それらの悩みの根底にあるのは、やはり家族、友だち、恋、受験、いじめである。
だが、演じる子役たちは、はるかに子どもの顔つきをしている。昔よりさっぱりした髪型で、小ぎれいにしているからか。
いつの時代もティーンエイジャーには、大人には言えない悩みがあるはず。
なのに、最新の金八先生に出てくる中学生たちは、昔の小学生のような子どもに見える。
金八先生はそれに対し、〈精神年齢が低くなった〉という結論を述べている。
僕の子どものころは、〈大人が絶対〉の抑圧された時代だった。いらん苦労を強いられていた。
こういう環境下では、人は歳をとるものなのかもしれない。
また、昔の子どもはみんな当たり前のように家事をさせられたが、いまは子どもに家事をしてもらうためにはお小遣いをあげないといけないという。
それ昔すぎ、と突っ込まれそうだが、人生五十年時代だった織田信長のころは食べ物も栄養のある食品がいまよりも少なかった。
兄が言うには、たんぱく質が不足していた。肉とか魚とかは食べず、ごはんに、珍しく獲れた魚がたまに出されるくらいだからではないか、とのことだった。
ところで、先日仕事のクライアント様である古名飴社長とお話したら、以前お話したときよりも若返っていた。
このところ、モリンガを摂っているのだという。
モリンガは、〈奇跡の木〉と呼ばれる植物で、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、抗酸化物質（自著『オレンジ病棟』でも、これらは肌や髪をつくる物質であると書いた）がたくさん含まれている。
古くはクレオパトラ。現代では、モデルのミランダ・カー、女優のアンジェリーナ・ジョリー、シンガーのマドンナといったセレブたちが愛用している。
疲れやすさや認知障害も改善されるとのことなので、僕もサプリメントでモリンガを摂りはじめた。
芸能人は顔が若い。これは精神年齢からくる若さもあるだろうが、モリンガみたいな抗酸化作用のあるサプリメントを摂っていると思われる。
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うちの飴社長が輸入している商品なので、あなたも是非！
……と宣伝も入れてしまったが、若さがいいか悪いかといったらいいに決まっている。
話を元に戻そう。
昔は移動も馬があるが、ふつうの人は歩きで、自動車も電車もなかった。
いまはベッドの人が多いが、昔は畳の上で布団に寝ていた。
その考えでいくと、昔は老化が早かったのかもしれない。
だが、僕はひとつ思うことがある。
戦争がなかった僕らの世代でも、関西の人間は1995年に阪神・淡路大震災を、関東の人間は2011年の東日本大震災（そのほか、鳥取、岩手宮城、熊本、福島など多数あったが）を経験している。
2011年、神奈川でこれまでになかった大地震を体験した僕は、しばらくの間、またいつくるかわからない余震を恐れ、相当疲弊した。
そんな我々が、戦後、理不尽な目に遭ったり、食料が不足していたことなどの疲弊を想像するのは難しくはない。
疲弊などの苦労は、いやでも人を年取らせ、賢くさせ、協調的な大人にする。
パソコンがあれば、通販で何でも届くいまとは異なり、昔は娯楽も限られており、苦労の多い時代だったから年を取ったのだろうか。
何かやるにしても、上から「やれ」と言われる時代ではなく、自分が好きなことを徹底的にがんばる時代になってきている。
そんなことも関係しているのかもしれない。
僕個人に関して言えば、両親が死んだとき、自分が、心の底から他人の心情を慮るようになった気がする。次死ぬのは自分なわけだし。
森高千里さんは『若さの秘訣』は〈ロックンロール〉と歌っているが、それも腑に落ちる。
僕も、若いころの自分と現在の自分を繋ぎとめているのはロックやポップミュージックだし、数年に一回ライブに行くと、忘れていた〈青い気持ち〉が蘇る。
この話題を兄に振ると、いまの人は人生を楽しんでいるからでは、という言葉が返ってきた。
いまの人は旅行は行くわ、テニスはするわ、筋トレ、ストレッチ、ヨガとかインターネットとかもやったりしている。
昔に比べて平和になり、夢中になる趣味の幅も広がっていることが、いまの大人を子どもっぽく見せているのかもしれない。
© 2024 Daisuke Asaoka
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