#8:マプロン【朝丘 大介】

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マプロン  朝丘大介

 

ぼくが通っていた中学には、飲み物の自販機があった。

 

 

売られていたのは、紙パックの牛乳、コーヒー牛乳、フルーツジュース、
それにマプロンという豆乳飲料だ。

 

 

どれも六十円くらいの値段だった。

 

 

 

牛乳やコーヒー牛乳、フルーツジュースは、みんなふつうに飲んでいたが、
マプロンを飲むと馬鹿にされるので、みんな警戒して買わなかった。

 

 

 

だが、クラスメートにひとり、マプロンが好きな生徒がいた。

 

 

 

 

彼がマプロンを飲むと、みんな「げっ。マプロン飲んでるぅ~」とはやし
立てるのだが、その彼は「うるさい!栄養に良いんだぞ!」とひとりで奮闘していた。

 

 

では、どうしてマプロンを飲むと馬鹿にされたのか?

 

 

当時、豆乳というのはコンビニやスーパーになく、馴染みのない日本人にとって、その味がどこか奇異に感じられたのではないだろうか。

 

 

 

外国人がみそ汁や納豆を飲食するような感覚だ。
幼稚な人間は、自分たちとは異なったマイノリティ、つまり少数派をからかおうとする傾向がある。そういうことなのだろう。

 

 

豆乳がこれだけ日本人に普及した現在、あのころ卑しめていた連中も、

 

いまでは健康のために豆乳を飲んでいるかもしれない。

 

マプロンを飲む生徒をからかっていたことは〈なかったこと〉にして。

 

朝丘先生
朝丘先生
今回はミニコラムにしました。

©2023 Daisuke Asaoka

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