#38:出版放浪記② 役に立ったカセットレコーダー【朝丘 大介】

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出版放浪記② 役に立ったカセットレコーダー

 

2004年の夏、買ったばかりの愛車で北海道へテーマのない旅をすることにした僕は、行きがけに大型電気店に立ちよった。

 

 

カセットレコーダーを購入するためだ。

 

 

旅行中、行く先々の景色や、いまどこを走行しているかをテープに録音していき、元の生活に戻ったら、思い出として聴きかえすつもりだった。

 

 

売られているカセットレコーダーのなかから一番安いやつを購入すると、さっそく百円ショップで買ったテープを入れ、車のアクセルを踏んだ。

 

 

録音したテープによると、学生時代、広島の尾道へ旅行したとき、テープに録ったことが気に入ったらしい。

 

 

以下、東京の大型電気店を出てから富良野へ行くまでの記録。

 

 

カセットテープより抜粋。

 

 

「栃木県を越えて、現在福島へ向かっているところです。今朝は11時に出ました。いまこの録音をしているカセットレコーダーは3900円で買えた」

 

 

「きょう、おふくろが八つもおにぎりを作ってくれた。気持ちは嬉しいけど、八つも食うのは正直しんどい。いまちょうど四つ食べて飽きてきている」

 

 

「いま左手に大きな観覧車が見えてきた。夜景に緑が輝いている。緑にライトアップされた大観覧車。なんなんだ、これ。ジャスコの前にある」

 

 

「それにしても、東京じゃ毎日すごい汗をかくのに、こんなに寒いとは思わなかった」

 

 

「なんだって慣れると飽きてくるものかもしれないなあ。うーん。運転がそんなに面白くなくなってきた」

 

 

「右手には福島レーシング協会が見えます」

 

 

「8月13日。金曜。いま朝六時です。車はほとんどいない。仙台だけれど、70キロくらいで……。たぶんこの調子だとすぐに着いちゃうかもしれないね」

 

 

「いま仙台に向かっている途中です。左は線路で、まわりはトトロの森のような緑に囲まれている」

 

 

「あー、あー。きょうは8月14日。いま岩手牧場が左手にあります。北へ行くにつれて、空がだんだん広くなってきました」

 

 

「あー。渋滞にはまっています。昨日は朝六時に出て、車の中ですごいハイテンションだったんだけれど、あのハイテンションは何だったんだろう。八時に外にある温泉があって、気持ちよくって……。休憩所っていう畳の部屋があったから、そこで寝て……。十時半くらいに寝たのかなあ。そこからまた走りだしました」

 

 

こうして顧みると、この時点では、とりわけて記録に残すほど物珍しい風景がなかったように思われる。

 

 

どこまで行っても、日本は日本。ふだん地元神奈川で目にする大通りの街並みと似たり寄ったりということなのだろう。

 

 

そのほか、テープではいろんなことについてぼそぼそと独話している。

 

 

両親について。友だちについて。地方に住んでいたころの思い出。

 

 

いまを楽しくするにはどうしたらいいか。

 

 

自分のことを〈おれ〉と言っているし、心向きもいまと異なっている。

 

 

その後の人生で出会った人たちの影響で、変心したのだろう。

 

 

「宮城県を通って、盛岡を越えて……。盛岡は岩手県か。帰りまた同じ道を通って帰るの、すごくめんどくさいから帰りは秋田、山形方面で帰ろうかな。それも面白いかもしれないな。そうすれば飽きないし、また戻るって感じがしない。それに何か新しい発見があるかもしれない。うん」

 

 

「ちょっと道路を甘く見ていた。きついわ正直」

 

 

「なんとか渋滞を抜けました。……て、なんで敬語使っているんだよ、おれは」

 

 

「旅行だから贅沢しようかっていうと、そうでもないね。北海道のラーメンくらいかなあ……。あんまり金を使う気にならないっていうか、うん。無理して特産物を食っても仕方ないし……。いまどこにいても食えるしねえ」

 

 

「あー、あー。三日目も終わった……。目の前はまっ暗な海だ。ここはフェリー乗り場。海の向こうには北海道があるんだ。まっ暗で、となりには大型トラックが停まっている。キューブのシートを倒して、ベッドにした。こういうところで夜を過ごすのも、悪くない。こういう夜があとどれだけあるのか。都会じゃキューブのなかでなんて、なかなか寝られないからなあ……」

 

 

「いま北海道道立図書館の横を通った。図書館は右手に見えて、札幌と江別のあいだにあるんだけれど、ゴルフ場のまん中に図書館があるようで、すごいグリーンの量だ」

 

 

「北海道はお天気雨がすごく多い。それで雲がすごく低いから、雨の降っているところと降っていないところが、すごくはっきりしている。いままで雨が降っていたかと思うと、50メートルしたら、急にからっとしていていて、道路まで乾いていたり……だとか」

 

 

「小噺(こばなし)で、牛の頭の部分が濡れていて、しっぽの部分は濡れてないっていうのがあるけれど、その小噺もあながち間違いではないな」

 

 

「月曜日。旭川に着いて温泉に来てみたんだかれど、2500円もするからやめる。どうせ2500円払うなら、富良野で露天風呂に入ったほうがいいや」

 

 

「北欧といった感じだ、富良野は。景色に見とれて事故起こしちゃいそうだ。なんかa-haのセカンドアルバム『スカンドレル・デイズ』のジャケットそのものといった感じ。うーん、畑がきれいで雲もなんか絵のようだ。『遥かなる空と大地』って感じ」

 

 

そして、この日の夜さりがた、僕は車にひかれることになる――。

 

 

入院して四か月が経ったころ、見舞いにきた人たちから、忘れっぽくなったんじゃない、と指摘をうけるようになった。

 

 

「朝ちゃん、ちょっとボケたんじゃない? さっきから同じことを五回も訊いているよ?」

 

 

再三再四同じ質問をされ、頭にあるかどうかテストされたりした。

 

 

いまは割と平穏だが、カッとなったり、不安定になっていることも指摘された。

 

 

「なんで怒っているか、わかんないよ」

 

 

「朝丘さん、頭部外傷のせいか、なんか以前と変わったね」

 

 

入院している病院の精神科にかかり、交通事故後に起こるPTSDと診断された。

 

 

この時点では、それほど自覚はなかったと思う。両親は、担当医から「いつも病棟でぼーっとしている」といった話を聞かされたそうだ。

 

 

病棟でも薬を飲みわすれてしまうため、看護師さんにより、僕の床頭台(ベッドサイドに置かれた台)の上にだけ『薬箱』なるものが設けられた。

 

 

これはどういう物かというと『朝』『昼』 『夜 』『寝る前』と区割りされた透き通った小箱で、薬を飲み忘れないよう、飲みおわった薬袋を容れるたまのものだ。

 

 

そうして入院生活を送るうちに、鞄に入っていたカセットレコーダーが役に立つようになった。

 

 

見舞いにきた人との会話や医師の説明をカセットレコーダーで録音するようになったものの、入院している時点で健忘の自覚はあまりなかった。

 

 

入院中はテレビ見て寝てるくらいしかない、単調な生活だ。

 

 

自覚がなくて当たり前である。

 

 

だが、退院して、自分の健忘を、身をもって感じることになった。

 

 

そのころから、母が勝手に財布をいじって、中に入っているカードとかをベッドの上にほっちらかすことが幾度となくあった。

 

 

そのたびに僕は「勝手に人の物をいじるな!」と立腹した。

 

 

母は、知らない、ととぼけている。

 

 

だが、両親が旅行に行っているとき、自分の財布の中身がまたもやベッドの上にひろげられている。

 

 

僕はゾッとなった。犯人は自分だったのだ。

 

 

両親が健在だったころ、こんなやりとりがあった。

 

 

「久しぶりに肉が食べたい」

 

 

「おとといヒレカツ食べたでしょ」

 

 

「食べてないよ」

 

 

「食べたでしょ?」と言われても、本当に覚えていなかったので、僕にしてみれば、「???」なのだった。

 

 

そのほか、何かをしていて、さっきそれを自分でやった形跡が残っているのに気づき、ハッとなったり、家族から「さっき自分で言ったこと、忘れちゃったの?」「もうそれ聞いたよ」などと突っ込まれるようなことがよくあった。

 

 

〈記憶がとぶ〉というのとは、すこし異なる。〈記憶がとぶ〉ということは、前後のことを覚えているということだ。

 

 

軽々しい自己分析は避けたいが、文字通り、〈そのときのことが頭にない〉状態だったのだと思う。

 

 

ちなみに、五年におよぶ両親のダブル介護を終え、現在はB型就労支援事業所で書く仕事をして、記憶に関してはだいぶ良くなった。

 

 

話が横道に逸れてしまったが、事故に遭ってから録音したカセットテープは、入院日記や開示したカルテ、入院当時のメール記録などと共に『オレンジ病棟』を書いていく過程において意味を持つことに。

 

 

©2024 Daisuke Asaoka

 

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