
この変更は2025年1月1日より正式に発効し、日本を含む各国からメキシコへの発送に影響を及ぼしています。
特に個人向けのギフト・EC取引・越境通販などを行う事業者にとって、非常に重要な法改正となっており、未対応の場合は貨物返送やトラブルが発生するリスクがあります。
■ 変更の背景と目的
今回の規制強化は、以下の目的で行われたと見られます:
通関制度の透明性と税収強化
偽装申告(ギフト・曖昧な記述)を防ぐ
輸入者責任の明確化と国内税制への準拠強化
これにより、簡易通関制度の乱用や不正輸入の抑止を図る一方で、すべての貨物に対し厳格な税関申告ルールが適用されるようになりました。
■ 新ルールの概要
【1】簡易通関の適用条件(Pedimento Clave T1)
| 申告価格(CIF価格) | 対応可否 | 備考 |
|---|---|---|
| 2,500ドル未満 | ✅ 適用可 | 簡易通関(Pedimento Clave T1)対象 |
| 2,500ドル以上 | ❌ 適用不可 | 通常の正規通関手続きが必要 |
【2】1,000ドル以上の貨物には輸入者登録が必須
1,000~2,500ドルの貨物は、荷受人が「Padrón de Importadores(輸入者登録簿)」に登録されていることが通関の条件になります。
未登録の荷受人宛ての貨物は、通関不可・返送対象となります。
✅ 企業宛であっても、Padrón登録がなければ通関不可になるため注意。
【3】貨物情報の提供義務が大幅強化
2025年1月以降、メキシコへ発送する全エクスプレス貨物には、以下の情報が正確・詳細に提供されていなければなりません。
荷送人が提供すべき必須情報:
貨物の正確な商品名・説明
❌ NG例:「Clothing」「Shoes」「Gift」「Merchandise」
✅ OK例:「Men’s cotton T-shirts, 100% cotton, 3 pcs」
荷受人情報
氏名(フルネーム)
完全な住所(番地・市区町村・郵便番号・州)
電話番号およびメールアドレス
メキシコ納税者番号(RFCおよびCURP)
外国人宛の貨物(非メキシコ市民)
以下のいずれかのID番号が必要:
パスポート番号
外国納税者番号(TIN)
社会保障番号(SSN)
【4】情報不備による重大なリスク
上記情報が1つでも欠けていた場合、メキシコ税関は貨物を通関不可として発送元に返送します。
返送費用はすべて荷送人側の負担となり、事業者にとって大きな損失リスクです。
【5】「デミニミス制度(免税枠)」の廃止
従来は50ドル未満の貨物は無税(非課税)とされていましたが、この制度は2025年から完全撤廃されました。
今後はすべての貨物が関税・付加価値税(IVA)の課税対象となるため、小額ギフトやサンプルであっても税負担が発生する可能性があります。
■ 実務への影響と対応策
✅ 【EC・個人輸出業者のチェックリスト】
| 対応項目 | 対策内容 |
|---|---|
| ✅ 荷受人のRFC/CURPの取得 | 発送前に取得依頼 or 顧客から事前に提出 |
| ✅ 正確な品名の記載 | カテゴリ・素材・数量を明記 |
| ✅ メール・電話番号の確認 | 確実な連絡先情報を収集 |
| ✅ Padrón登録確認(1,000ドル超) | 顧客が登録済か要確認 |
| ✅ 運送会社との連携強化 | FedEx, DHLなどに対して事前情報の共有を徹底 |
■ 【個人ユーザー向け注意点】FedEx利用時の要件
FedExやDHL等を利用して個人宛に荷物を送る場合、あらかじめ荷受人がRFCおよびCURPを取得しておく必要があります。
特にメキシコ国内の個人ユーザーに向けた贈答品・返品・購入品などは、通関時にRFC未記載で足止め・返送となる事例が急増しています。
■ まとめ
2025年から始まったメキシコの通関ルール変更は、単なるマイナーチェンジではなく、越境EC・国際物流における大きな制度変更です。
輸出者・荷送人・越境EC事業者は以下3点を特に徹底しましょう:
貨物情報の正確性
納税者番号(RFC/CURP等)の事前取得
申告金額によるPadrón登録の要否確認
💡補足:Padrón de Importadoresとは?
メキシコ税務当局SATが管理する、正規の輸入者として登録された法人・個人のリスト。1,000ドル以上の貨物輸入には、登録済みであることが必須条件となります。